沖縄には、本州では珍しい植物がたくさん自生しています。特に私のお気に入りの植物は「月桃」です。
月桃とは沖縄に自生するショウガ科の多年草です。ショウガ科で、花の蕾がピンク色をした貝殻のように見えることから、英語ではshell gingerといいます。
沖縄では月桃はどこにでも生えています。道路や畑、学校、誰かの家の庭、本当にどこにでも生えています。月桃の生命力はとても強く、成長速度も驚くほど早いです。あちこちに生えている上に成長も早いとなれば、普段の生活で当たり前のように目にします。沖縄の人にとってはとても身近な植物なのです。
月桃の効能は優れていて、沖縄では古くから薬草として活用されていました。また、茎を乾燥させて籠や鞄、コースターなどの民芸品としても月桃は活用されています。
沖縄に移住してから私は月桃に魅了され、これまで月桃を使っていろいろ作ったり、お茶にしたり、お餅を包んだり、漬物にしたり、染め物をしたり、化粧水を作ったりしてきました。
今回はそれらを紹介します。
草編みとしての月桃
月桃の茎の部分を剥いで乾燥させテープ状にし、編みます。いろいろと工夫すれば、本当になんでも作れます。
私は今までに、コースター、鍋敷き、小物入れ、籠、鞄を作りました。そのほかに、ランチョンマット、お弁当箱(おむすび入れ)、円座なども作ることができます。
草編みをしている時間は、集中してただ黙々と作業をします。これが動く瞑想のようで、とても良い時間です。たまにお気に入りのポッドキャストを聞きながら作業することもあります。また、草編み仲間とゆんたく(沖縄の方言で“おしゃべり”という意味)しながら何かを作る時間もお気に入りです。
お茶としての月桃
月桃は葉っぱと実でお茶にすることができます。月桃には、ポリフェノールが赤ワインの約34倍含まれると言われています。
葉っぱは1年中採れますが、実は9月から10月頃につき始めます。私は実をお茶にするのが大好きです。
赤く熟した月桃の実をとれるのは1年で限られた期間だけ。収穫した実をきれいに洗い、天日干しにします。赤い実がパックリ割れて、中から黒い種が顔を覗かせます。
沸騰したお湯で月桃の実を煮出します。じっくりと待てば月桃の実と同じように赤く美しく色づいてきます。ポリフェノールやミネラルを豊富に含んだ月桃茶の出来上がりです。
ムーチーとしての月桃
沖縄では月桃の葉でお餅を包む、ムーチーというおやつがあります。毎年、旧暦の12月8日がムーチーの日であり、ムーチーを食べるという風習があります。厄払いや健康祈願、子供の健やかな成長を願います。月桃の独特な強い香りには邪気を払う力があると信じられていたり、癒し効果があるとされていたりします。
月桃の葉に包まれて蒸されたお餅は、ふんわりと月桃の香りがします。
月桃の葉には高い抗菌力、防虫防カビの効果があり、腐りにくいのです。これも沖縄の古くからの知恵ですね。
漬物としての月桃
4月下旬頃から月桃の花が咲き始めます。先端がピンク色をした白い蕾がぷっくりとしてきたら、赤い模様が入った黄色い花が開きます。
お漬物に使うのは、その黄色く咲いた花の部分です。
洗って少しだけ茹でて、甘酢につけるだけの簡単レシピです。一晩置くとピンク色になって可愛らしいお漬物の出来上がりです。
月桃はショウガ科なので、生姜の甘酢漬けと同じような風味になります。お寿司やもずく酢に添えたり、サラダや和え物に乗せたりしていただきます。
染め物としての月桃
お茶で煮出すとき、ムーチーを蒸すとき、お花を茹でるとき、月桃からはとても鮮やかな色が出て、水が美しい色に染まります。それを見ていると、染め物もできるんじゃないかと思い始め、調べてみるとやはりできるそう。月桃を専門に染め物をしているショップが石垣島にあったので、染め物体験をしにいきました。
季節や個体差によって、仕上がる色はいつも違う色。どんな色味が出るのかも、染め物の楽しいところです。
私はTシャツを染め、茶色に近いような暖かな色に仕上がりました。
化粧水としての月桃
まず月桃をホワイトリカーに漬けてチンキを作ります。私は月桃の蕾、実、葉でそれぞれ作ってみました。
これを精製水と混ぜ、保湿のためにはちみつを少し垂らすと、月桃化粧水の完成です。
月桃には抗酸化、抗菌作用があり、美容効果や肌トラブルを抑えてくれる働きがあります。
月桃がある生活
身近にあって、優れた効能を持つ月桃。用途が広範囲に及ぶので、さまざまな場面で大活躍します。
今まで月桃でいろいろと作ってきましたが、私もまだまだ試したいことがたくさんあります。月桃を活用した生活は無限大です。
大好きすぎる月桃。いつまでも月桃が身近にある場所で生活したいと願っています。